昨夜、フランス・ロンシャン競馬場で凱旋門賞の前哨戦・フォワ賞(4歳上・GII・芝2400m・1着賞金7万4100ユーロ・9頭立て)が行われ、2011年のクラシック3冠馬オルフェーヴルが最後の直線で楽々と抜け出して優勝。昨年に続き連覇した。
そして今年のダービー馬であるキズナも、ニエル賞(3歳・GII・芝2400m・1着賞金7万4100ユーロ・10頭立て)を、武豊騎手最高のエスコートで優勝を果たし、堂々と世界デビュー。
固唾を飲んで日本代表馬を見守る競馬ファンにとっても、本番の凱旋門賞(10月6日)に向けて、これ以上ない最高の『前哨戦の夜』になった。
キズナを管理する佐々木晶三調教師のコメントによれば、同馬はフランス入りしてからとてもおとなしく、よもやの惨敗も覚悟しての挑戦だったという。初めての渡仏、初めてのロンシャン、初めての世界戦。3歳のキズナにしてみれば、目の前にある何もかもが初めてづくしで、なんとなく「おとなしく」なったようにみえたのかもしれないが、彼には凱旋門賞を知る父ディープインパクトの血が流れていることから、みるものすべてが遠い記憶のように呼び起こされ、「これが父さんが走ったロンシャンなんだね」と、感じたのかもしれない。
私が子どもの時、初めて乗った観光幌馬車のことこととした揺れに、どこか懐かしさを感じたのは、戦後生まれの母からの「血の記憶」からだと思った。自分の血の中に親が経験した記憶が受け継がれるかどうかはわからないが、ブラッドスポーツである競走馬たちなら、それくらいのことはあっても不思議ではない。
そして、ダービーと同じように、きわどい勝ち方をするのもキズナらしい。素晴らしい血統、これ以上ない騎手。キズナという名前に託された日本国の祈りににも似た想い。決して天を仰ぐような圧勝ではないところがキズナらしく思えてならない。様々なものに恵まれた優等生でも、最後の最後で粘りの勝ち方をするキズナは我が国の象徴でもあるような気がした。
若武者キズナにはまだまだ未来がある。
5歳になったオルフェーヴルについて話したくなった。
昨夜のフォア賞のパドック。
黒いメンコをつけて現れたオルフェを見て、彼が通り抜けてきた苦悩を思い出していた。
阪神大賞典での逸走。その後平地調教再審査の制裁。栗東トレーニングセンターで行われた再審査。オルフェはたったひとり、桜の咲くEコースを走っていた。
怪我をして第一線を退いていった名馬たちはたくさんいるけれど、オルフェのようにメンタル面でとやかく言われ続けた最強馬もそういないだろう。
あの時、彼は危うくヒトの都合で葬られるところだった。
強いレースをした後の度重なる騎手の降り落としや(何度も確認したが、私には、ただ急に止まっただけで、降り落としているとは思えないが)、気性の強さからくる制御できないレース運びなど、持って生まれた『ふたつの強さ』に悩まされる姿が痛々しくてならなかった。
昨年の凱旋門賞では、帯同馬のアヴェンティーノがいないと走れないと言われ、兄と慕う彼の背中を追い抜いた後は先頭に躍り出て後続を突き放し、死力を尽くすもソレミアの2着。ゴール直前、本気で走ったのにもかかわらず、牝馬に抜かれてしまったオルフェの激しく動揺した表情が忘れられない。レース直後に池江師から発せられたリベンジのコメントは、世界の頂点に1完歩及ばなかったオルフェーヴルの気持ちを代弁していると思えた。
順風満帆という言葉は、オルフェーヴルの血統には存在しない。父ステイゴールドも、祖父メジロマックイーンさえも。鼻先を蹴られてケガをしたニュースは、ただでは済まないオルフェの生まれ持った因果なのか。様々なアクシデントを乗り越えて、昨夜ついに、数か月ぶりの姿を見せてくれたオルフェにうるうるきてしまう。同時に、キズナのレース前には感じない、大きな大きな心配の歴史があふれてきたのは、私だけではないだろう。
強いのは十分すぎるくらいわかっている。
だけど。
こういう時、やらかすのがオルフェーヴルだとしたら…。
日本の宝は輝いていた。
黄金色の尾がどの馬よりも美しく風にたなびき、鬣は燃えるようだ。なんてかっこいい馬なんだろう。
今までのレースで1番いいのではないかと思わせるスタートを決め3番手を追走。かかる様子もなく道中を好走すると、最後の直線では軽快で力強いフットワークで余裕の突き放しを披露して快勝!(T-T)
私はうるうるどころか、本格的に泣いてしまった。「それ」にはまだ早いというのに。
スミヨンだけが大いに笑顔だった。それでいいと思う。彼はオルフェの強さをその日を持って、マリアナ海溝よりも深く確信したのだから。騎手は馬の強さを信じ貫くことが何よりも大切で、ミリ単位の迷いが命取りになる。スミヨンは、あれでいい。自信満々で本番も挑んでほしい。
オルフェを褒めたたえる騎手の笑顔と対照的だったのは、池江師をはじめとする陣営たち。「前哨戦を勝つために来たのではない」と言いたげな師の頑なな表情に不気味さを感じつつも、世界に向けて「忘れ物を取りに行くなんて、生半可なものではない」と、全身を使って発信した強い決意が垣間見れた。向こう様はどう思っているのかわからないが、闘うのは「相手」ではなく「自分」というところがオルフェーヴルなのである。師から伝わるシンパシーは、そう言っているようだった。
師は人払いをした誰もいない馬房で、「よくやった」とオルフェに語りかけ、何度も美しい鬣をなでて彼を労ってくれたはずだ。私はそう想像したい。
日本の『宝と絆』は、10月6日の凱旋門賞で、最高の結果をきっと残してくれるだろう。
元寇の時以来の大きな神風が、今世紀また吹こうとしている。
上坂さんこんばんは♪
昨日は、TVにかじりつき久しぶりのオルフェに感動、興奮あの美しさにため息でした(^^)キズナも凄い仔なのは分かっているのですが…やっぱりオルフェじゃなきゃダメなんです凱旋門賞馬は。人の心を動かすものがオルフェにはてんこ盛りで、まさに母性本能くすぐられっぱなしの女子が多いのではないでしょうか?それでいてあの走りです。まさに上坂さんの言う「宝」に納得です。今年で悲しいけど引退です。最後にとっておきのパフォーマンスをしてくれるよね。
日本のみんなが応援しています!
頑張れオルフェーブル!
てるみ 2013-09-16 21:28:23
てるみさん、こんにちは♪いやぁ~、すごかったですね!日本代表馬怒涛の快進撃!最高の前哨戦!キズナはこれから大いに活躍してくれることをふまえて割愛しましたが、やはりオルフェーヴルの「生き様」に泣けてきます。凱旋門賞馬はオルフェーヴル!!だと信じて書きました。引退の文字を今拝見して、もううるうるきています(T-T)
上坂由香 2013-09-17 18:29:02
日本が誇る新旧ダービー馬。
両馬とも色んな思いが詰まっていますからね。
前哨戦とはいえ、相当なインパクトを
欧州メディアに与えたのではないかもしれません。
今年こそ
日本の競馬関係者、ファンの夢が叶う時かもしれませんね。
何といっても日本が誇れるダービー馬ですから。
しょう 2013-09-17 19:24:39
しょうさん、こんばんは♪本当にその通りですね!日本の誇るダービー馬2頭が、とうとう世界を脅かす時がやってきました!粘り強く挑戦し続けた先人や歴代の馬たちも、この日が来るのを待っていたと思います。闘う舞台は整いました!あとは思いっきり実力を発揮できるように祈るだけですね!そして、必ず無事に私たちのもとへ帰って来てほしいです!
上坂由香 2013-09-18 23:19:14