今週は宝塚記念。
絶好調だと言われていたオルフェーヴルが宝塚記念を回避してしまった。
なんだかんだ言っても、オルフェのいない宝塚記念は、楽しみの半分以上をもぎ取られた喪失感がある。
最強牝馬、2冠馬、春天馬が3頭まとめてかかっても、
千両役者であるオルフェーヴルの存在感には遠く及ばない気がしている。
いつも自分の身近で起きたことや、友人たちが紹介してくれる素敵な話をシェアして楽しんでいるfacebookが、
悪魔のような知らせを受け取ったり発信したりするツールに変貌した水曜日。
みんなのKEIBAでおなじみの福原アナウンサーが栗東取材を終えて、
お疲れモードの何気な~~いコメントをあげていた。どうやらまだ、あの恐ろしいニュースを知らないようだった。
無理もない。記事が出てから1分しか経っていないのだから。
私のようなものから聞かなくても、のちのち知ることになると思ったが、この悲しみを福原さんと共有したくなってしまう。
「オルフェ、回避です。」 コメントを入れてしまった!消してしまおうかとも思った。
「え?」 福原さんは即答だった。
わけのわからないおばさんから言われても、とても信じられないことなので、お節介ついでにニュースのリンクを貼り付ける。
「・・・。」
しばらくの沈黙。そして、静寂を突き破って出された文字は、
「涙」
くぅ~…。
私も即時に返答をした。
「涙。」
この時の模様は、競馬雑誌に連載されている福原さんのコラムに書いてあったので、
私もやんわりネタバレを。
今年の宝塚記念は、昨年と比べものにならないくらい、いろんな意味合いが込められていたと思う。
2012年のジャパンカップ。最強牝馬との対決で辛酸をなめたオルフェーヴルのリベンジ。
その両者に胸を借りて、なんなら勝ってみせましょうか?くらいの勢いも頼もしいフェノーメノ。
敵は己だけ。他馬は関係ない。とにかく自分の競馬をしっかりと演出したいファンタジスタのゴールドシップ。
ここを勝ち、凱旋門賞までの道のりを薔薇の花びらでいっぱいにしたい紅一点ジェンティルドンナ。
そして、私たち競馬ファンには、4強と言われるこの時代の目撃者になる使命があった。
肺出血。競馬をおぼえてから、初めて聞いた病名だ。
「せんせい、ぼく、なんだかやけに苦しいんですけど…」
池江師は、見た目ではよくわからないこの症状に気づいてくれた。オルフェの声が聞こえたと思う。
私も高校のバスケ部時代、走りすぎて、口の中に血の味がしたことあり、もしかすると、喉が切れたか、
オルフェと同じ、肺からの出血でそんな感じがしたのかもしれないなと思い出していた。
ひとは「そんな感じがする」「具合が悪い」と言えるけど、競走馬は話せない。
症状を見落とせば、大変なことになっていたはずだ。
大事に至らなくて本当に良かったと思う。
時々、「馬はこのくらい全然痛くないんだよ」とか、
「大丈夫、平気平気」と、馬の様子や心の声を軽視するようなことが、ヒトの世界では簡単に起きることある。
馬サイドからすれば、
「ぼくたちは生きているんだよ。本当は痛いし苦しいんだよ」と叫んでいるかもしれない。
ヒトの方が、聴力や野性味が退化していて聞こえないだけなんだと、無理やり思いたい。
乗馬クラブで、釘か何かに皮膚をぶつけて、皮がめくれあがって出血している馬にも、
もう少し優しいタッチで薬を塗ったらどうなんだい!と思う事もしばしば。
昆虫じゃあるまいし、痛みのわかる動物なんだから、とにかくそれを忘れないでと言いたいね。
タイトルを「うまのこえ」と、わざわざひらがな表記にしたのは、
「わかりませんでした」とか、
「聞こえませんでした」とか、
「読めませんでした」と言わせないため。
ちょっとイヤミでしたかね?
オルフェーヴルは、少しの休養を経れば、回復の見込みがあるという。
とにかく、実力的に少しの目減りもせず、
元通りの馬体に戻って帰って来てくれますように。