思い起こせば昨年の暮れ。
6歳で挑んだ香港スプリントを、9着で終えたストレイトガール(父フジキセキ)。
一度は「お疲れさま」と、安堵の気持ちを抱きながら白いハンカチを振ったファンは『…と、思わせといてやっぱり現役続行!』という報道に、少なからず非情を感じたことだろう。
私もそうだった。
これほどの牝馬を嫁に行かせない気か!いったい何を考えているんだ!などなど、よそ様の馬に対して、女性ならではの私情をてんこ盛りに騒いだ記憶も新しく、明けて走った阪神牝馬Sは、またもや9着…。
もう勘弁してやって!と、ポケットにねじ込んだくちゃくちゃなハンカチで涙を拭いたものだ。すべては1200mのプロである彼女の脚を気遣ってのこと。何でもすぐ忘れる私でさえ、6歳で秋天に出走したメイショウベルーガの「中」という最後の文字がチラチラしちゃっていけない。
昨日のヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)も、7番人気のストレイトガールについては、とにかく無事を祈るだけにとどめ、馬券にからめるのも憚られるほど…。
ところが!
「ハイ皆さん、パドックはこう歩くのよ」
見ていた皆さんも同じ意見だと思うけれど、30戦以上の円熟した経験が物語る素晴らしいウォーキング!やや小ぶりなトモもプリッと張って、美しい歩き方のお手本そのもの!
3番人気のためか、何度もパンされて映し出されるスマートレイヤー(父ディープインパクト)の、どこからどうみても、いいんだか悪いんだかさっぱりわからない馬体に気を取られる時間が長く続いた。レイヤーちゃん、またしてもモヤ~んとして、この馬は本当に逃げるのかね?などとぶつぶつ言いながら、7歳牝馬先生は床の間に飾り、私の軸馬1番人気のミッキークイーン(父ディープインパクト)をガン見。先生のご指導もあってか、皆さん素敵なパドックを見せていた。
3着になったことのないミッキークイーンに絶大な信頼を置き、大阪杯で肩を慣らした2番人気のショウナンパンドラ(父ディープインパクト)、逃げ馬専科のレッツゴードンキ(父キングカメハメハ)よりは、3番人気のスマートレイヤーが行くだろうと見込んでこちらを投入。なんだよ上坂、守りに入った人気順馬券だな!と思ったそこのアナタ。違いますよ~。
しっかりと下位打線であるメイショウマンボ(父スズカマンボ)とウインプリメーラ(父ステイゴールド)も入れ込んだ夢馬券をメイキング!
「マンボの感涙をもう一度馬券」で臨んだ第11回ヴィクトリアマイルは、スタートからレッドリヴェール(父ステイゴールド)が勢いよく飛び出し、カフェブリリアント(父ブライアンズタイム)も外から引っかかりながらハナ。ちょっとー、ドンキはおろか、レイヤーはどうしたんだ?人気馬は後ろや馬群の中だなぁーとハラハラ。ガール先生は依然、床の間状態だった。
速い流れの中、最後の直線で一番早くギアチェンをしたのはなんと、そのストレイトガール先生!
父フジキセキ、母父タイキシャトルの血がここにきて爆発したのか、7歳牝馬の脚は、他の誰よりもキレる瞬発力で前に飛び出し、そのまま2馬身以上ちぎってゴーーーーーール!7頭もいるG1馬たちを子ども扱いして駆け抜けていった。
一度引退を決めた7歳牝馬のG1優勝という『偉業』と『連覇』は、ストレイトガールの傍に寄りそっていた陣営だけにしかわからない、彼女の若々しさと状態の良さだったのかもしれないが、それに十二分に応えてみせた女傑は本当に素晴らしい。いまさらアンチエイジングなんかやってどうなるよ?と、毒を吐いてお手入れをさぼっている自分が恥ずかしくなってしまった。
2着3着に入ったG1馬たちも、ストレイトガール先生の影も踏めなかったことで、今後ますます美容と健康に気を配ることだろう。
これで有終の美になるかどうかはまだわからないというが、今後の発表はちゃんと本決まりになってからにしてもらいたいもの。私もトシですからね、何度も椅子から転げ落ちるリアクションは正直ツライんですよ(小声)。
偉業を達成した7歳牝馬ストレイトガールの歴史的瞬間は、「若い女に勝てるわけがない」と言わざるを得なかった世の女性たちに、ひょっとして私も?と、勇気と希望、お手入れの大切さを教えてくれたようです。