みなさまこんにちは、河合紗希子です。
演技修行中のロサンゼルスから更新しています。
日本出国から着陸までの間にApple Pencilをなくしてしまい、アメリカでもう一度買うというスタートを切りました。
異国の地でApple Pencilを買い直す未来なんて想像してなかった…
2年前は現地在住の友人が生活面をサポートしてくれたのですが、今回は全て一人の自己責任修行。
演技修行面とは別に、移動の車の手配から宿担当者とのやりとり、買い物、アメリカ住居の使い方アレコレなどなど、細々した部分に「?」となる部分も多く、都度都度ネットで検索しながら生活しています。
先日はキッチンで肉を焼いている最中に豪快に火災報知器を鳴らし、慌てて換気扇のスイッチを探すもあまりのけたたましさと英語の警報にてんぱって英文表示がゲシュタルト崩壊。
漸くVent Fanのボタンを押したところで、
「け、けむりぜんぜん出てないじゃん!!!」
と一人でちからいっぱい機械にツッコミを入れてしまいました。
こちらの火災報知器は日本よりも感度が高いとのことで、アメリカあるあるなのだそうです。
さてさて。
前回のBlogでは、祖父がハクチカラとアメリカ遠征をした際の記録が残っている手帳について綴りました。
▶︎ハクチカラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%AB%E3%83%A9
1958年、昭和33年の手帳
※無断で転載、複製などはご遠慮下さい
日本馬による、戦後初の海外遠征。
祖父はこのハクチカラの遠征に帯同し、滞在期間中にモンキー乗りを習得して日本に持ち帰りました。
当時は鐙を長くして乗る天神乗りが主流でしたが、祖父は海外の騎手が鐙を短くして騎乗しているのをニュース映画などで見て知っており、アメリカに行くならば習得してこようと思っていたのだそうです。
祖父は当時38歳。
40手前のフォーム変更は身体的にも優しいものではなかったけれど、少しずつ鐙を短くしていって慣らしていったとのこと。
祖父の生前、アメリカ遠征の話を聞いた時は、私はまだ競馬のことも知らなかったし乗馬も経験したことがなかったのでサラリと受け止めていましたが、40手前でのフォーム変更、言葉がわからない環境、そして限られた期間内…というかなりハードな状況だったのだろうと今はその事実がズンときます。
また前回の記事にも綴ったように、祖父は「文字」で記録や心情を綴り残すような人ではありませんでした。
そんな祖父がこの手帳に残していた細かい記録を辿っていると、何一つ取りこぼすまいという強い思い、そして静かに流れる気迫をところどころから感じるような気がします。
手帳の記録を読んでいると
5月26日…日本出国
5月27日…シアトルにて給油、検疫と荷物検査
5月28日…ロサンゼルス到着、検疫、車中泊
5月29日…検疫、車中泊
ここからLA時間
5月29日…検疫終了、競馬場へ移動→ホテルに宿泊。
5月30日…初めて馬場でハクチカラのトレーニング
という流れだったようです。
5月30日、初めてのトレーニングをした記録のなかに
「調教を終えて厩舎に帰ってくるとミスターホワイトがベリーナイス、ナイスホース、ナイスジョッキーと云ふ」
「十時頃、ミスターホワイトが競馬場の事務所に案内して、色々と騎手の免許の申請をしてくれた」
「トレーナーの連中が保田の騎乗はとても良いと云ふことらしいので免許を交付するようになったらしい」
「水曜日に身体検査とゲイトの試験をしたら免許を交付すると云ふ」
「誠に話が早くうまく進んだ」
という記録がありました。
そういえば、祖父が海外遠征の話をしていたときに、個人的に印象的だったエピソードがあります。
1ハロンをピタッと決まったタイムで走らせると、向こうの人は驚いて「なんでそんなことができるんだ」って聞きにきたよ。
日本では1ハロンを決まったタイムで走らせることは当たり前だったけれど、当時アメリカではそれがとても驚かれたのだそうです。
手帳の記録を読んでいても、アメリカに降り立ったハクチカラと日本人騎手が、現地でとても好意的に受け入れられ、評価を得ていたように感じられました。
こぼれ話
※無断で転載、複製などはご遠慮下さい
こちらは祖父の手帳の1ページ目。
住所の欄に
府中市1ー125
とあります。
母に「昔住んでいた家の住所?」と聞いてみたところ、これは昔の東京競馬場の住所なのだそうです。
美浦にトレセンができる前、まだ厩舎や騎手寮も府中にあったときで、たくさんの関係者の方々も競馬場に住んでいた時代。
日吉町という住所をもらう前は、東京競馬場一帯はこの住所だったんだとか。
なんだか東京競馬場の歴史が伝わってくるような瞬間でした。
ではではみなさま、今週も素敵な競馬ライフを
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