2014年04月28日

華のある馬だった。

今週木曜日。

今一番のライフワークになっている余生牧場めぐりを終え、白老から札幌へ引き返している途中。同乗者との馬談義が盛り上がり過ぎて、高速道路のインターを何度も見落とし、そのまま国道36号線を爆走していた。道中、いくぶん長めの赤信号に停車を余儀なくされ、ヒマつぶしにスマホを取りだし何気なくツイッターをみてみると…

「トウカイトリック死亡」!!!!うそだ。

あのトリック先生が死ぬわけがない…。

トウカイトリックと言ったら、私がいろんなところでたびたび先生呼ばわりしている鉄人ですよ!

私の中で鉄人といえばかなりの長期間、広島カープの衣笠ときまっていたが、競馬をおぼえてから黒メッシュメンコの男前たちが私の前に現れ、その座を真新しくぬりかえていった。偶然だが、8歳でG1を勝ったカンパニーも黒メッシュメンコを愛用していた。

8年連続天皇賞・春に出走した大記録におごることなく、競走馬の世界ではご高齢といわれる12歳で万葉Sを4着できっちりと掲示板確保と、最後まで本当に立派な男だったトリック。引退後は思い出のいっぱいつまった京都競馬場で、誘導馬になるべく毎日を過ごしていたはずなのに。

「パドックで放牧中に重度の骨折」…重度という文字が憎らしくてたまらない。運転中だというのに意識が遠のいてゆく。フロントガラスに、中団やや前めの定位置で、当然のように折り合うトリックの姿までみえてきた。いつの阪神大賞典…かな。

自宅に帰ってから、何度も何度も記事を確認して、彼は本当に死んでしまったんだと自分に言い聞かせる時間が長く続いた。翌朝も同じことをした。FBは彼の死を悼む現役当時の写真でいっぱいになり、トリックを好きになった2010年頃のことを思い出しては泣けてくる。

ステイヤーという言葉の響きがとても好きで、スプリンターやマイラーよりも、優しくきこえるのはどうしてだろう。

感動以外の涙は久しぶりすぎて身体に堪えたが、トリックへの追悼をこめて、今回のブログに書くことをきめた。誰よりも長く皆に愛された鉄人を忍ぼう。

トリックが長く続けてきた、万葉Sから阪神大賞典、そして天皇賞・春へ向かうステイヤー馬の王道ローテーションをみるだけで「今年も元気に走ってくれる」と安心したファンも多かったし、何より彼は、他のベテラン馬たちにはない華というものが若々しく保たれていた。

あやふやで、きめたことがすぐにひっくり返るような世の中において、トリックの競馬は「揺るぎのない美しさ」があり、安定というものが何より好きな女性ファンのこころをつかんでいたように思う。

ひたむきに仕事をする男の背中に、女は惚れるんですよ。

トリックがケガをしないで引退した時の安堵感もステイヤー級に大きいものだったし、同時に名馬の称号が与えられた。無事是名馬。彼の引退を見届けたことで、ファンたちも今までになかった達成感を味わったことだろう。

できることなら、彼のような息の長い馬にまたでてきてほしい、希少になった父エルコンドルパサーの血を「長距離馬部門」で残してくれないだろうかと、どこかに書いたこともある。

どんなカタチでもいいから、父になってくれないだろうかと本気で願ってみたりもした。

トリックはセン馬になり、通い慣れた京都競馬場の乗馬になった。

思い出のいっぱいつまった競馬場だ。ここに決まったことは、彼を愛してきた馬主や関係者の粋な計らいもあったと想像がつく。幸せは、どこまでも続くと思っていた。

馬運車で到着した時、「またここの3200mを走るんだな」と、素敵な勘違いしたかもしれないし、あたたかな風にのって、蝶々がひらひら舞うのを馬房の小窓から嬉しそうに眺めていたのではないかと、今は思っていたい。

来月4日の天皇賞・春では、全国にいる競馬ファン全員が、誘導馬の後ろを静かに歩くトウカイトリックの幻をみることだろう。

今頃は、京都競馬場のはるか上空から、馬頭観音横の献花台にたくさんのお花が手向けられたのをみて、こんなはずじゃなかったのにな、まさかなと、自分の死を信じられない思いの中、痛みのない世界で折れた脚をかばって立っているかもしれない。

待ち望んでいた桜が咲いたり、蝶が舞ったりする明るい春の季節に、悲しいお別れをするなんて思いもしませんでしたよ。本当に。

「思わぬことって何の前触れもなく起きてしまうものだから、やりたいことは先延ばしにしないほうがいいよ」

「みんなはどう思っていたかわからないけど、ぼくはね、春天に出走する時は、いつも勝ちたいと思って走っていたんだよ」

「ずいぶんと長い間走り続けてきたけど、最後に京都に帰って来れて本当によかったと思ってるんだ」

「今まで応援してくれて、ありがとうね」

ひーん!(涙)やっぱりダメー!…。

ありがとう、トリック先生。大好きでした。

私はあなたの長かった現役生活と、とても短かったその後から、いろんなことを学んだような気がしています(合掌)

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上坂さんもぅ泣いてます(T_T)
私もえっ?!トリックが嘘でしょ?!信じられず
トリック先生の掲示板見たら彼がどれだけ愛されて
いたかを知り又泣いて。馬の神様、トリック先生を
連れていくには早すぎるよ。みんなに愛された
素晴らしい名馬です。
今頃天国で父ちゃんと会ってるかな…トリック先生の
代名詞天皇賞春がもぅすぐです。みんなを見守ってて
下さい。

はじめまして。
デビュー時から応援している者です。あの日、まさか?と思ってから思考が停止、感情がなくなり、まったく涙が出ませんでした。
でも今日上坂さんのブログを読んで、はじめて泣きました。
そうなんです・・・関係者の方々がトリックがこれからも長くファンに愛され続けるようにと、いくつかある選択肢の中から京都競馬場を選ばれたこと・・・。幸せはどこまでも続くはずだったのに。
今はただトリックが安らかでいることを願うばかりです。

はじめまして。涙がとまりません。
トリックの訃報をきいて、涙し
先日、京都競馬場の馬頭観音さんにあった
トリックの献花台をみて、また涙・・・
そして、このブログを読み、号泣してしまった。
競馬歴は浅いもののトリックの物語は・・・
胸が熱くなります。
大きなレースがどうとかとは違うなにかが・・・

てるみさん、トリック(T^T)なんで死んでしまったのか、今でも信じられませんよ。現役最後まで立派な成績を残して京都へ行ったのに、神様は連れて行ってしまいましたね。今頃は父エルコンと一緒に、楽しかった春天の話で盛り上がっていると思いたいですね。

Kuriさん、はじめまして。ブログをお読みいただきありがとうございました。放牧中の骨折だなんて、鉄人トリックの脚にそんなことが起きてしまうなんて、ただただ悲しいです。今はもう痛みも苦しみもない世界で、ゆっくりと自由に駆けていると信じています。

京さん、はじめまして。ブログをお読みいただきありがとうございました。京都の馬頭さんにある献花台はどうでしたか?私は札幌なのでいけませんが、トリックを忍んでたくさんの献花でいっぱいになっていることでしょうね。彼の走り続けた競馬史はファンの心の中で永遠に生きていてくれると思います。本当に華のある競走馬でした。

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以上

上坂由香

出身地
北海道札幌市
職種
エッセイスト

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