2014年11月03日

フェアウェー競馬。

今年の天皇賞・秋は、150回というメモリアルレース。

クラシックもいいけれど、私は秋天が大好きで、この日をことのほか楽しみに待っていた…ら!

「今度の日曜日さー、今年最後のゴルフ行かない?」

この一大事に空気の読めない平和な友人T。相変わらずタイミングが悪いし、そもそも、私はゴルフなんて20歳の時にやめて以来ほとんどやってないし、何も始まっていないのだから今年最後なわけがない。

ぶっきらぼうに「無理」と2回言い放ってみたものの、「おまえの好きなキャディでもいいからつきあって」と、どうやら一向に引き下がる気もないようなので、キャディならいいかといそいそ出かけてしまった。どうしてこうも、頼まれたらイヤといえないのだろうかアタシ。

呪われた運命が幸せなお茶の間競馬の時間を奪っていったが、Tは競馬もちょいちょいするので、冬枯れのフェアウェーを歩きながら馬の話をしたり、キャディどころか、Tの買ったばかりのアイアンで地球に穴を開け、芝を容赦なく刈り取ってきた。そのたびに変な悲鳴をあげるものだから面白い。そんなにいたわしがるんじゃない。どうせ安物だろ。身体があったまるころには少しずつゴルフになってきた。キャディなんかしないぞ。

Tは二日酔いで気だるそうにチンタラ歩きながら、ジェンティルドンナが来るといっていた。私は結局これぞという決め馬にめぐりあうことはなく、決まらない時は馬券を買わないとした伊集院先生の本を読んでしまって、いやいやいや、そういうわけにはいかないんですよ、ファンは馬券を買って初めて競馬に参加できるんですよと、大それた反論を小声でひとつ。

菊花賞を蹴ってやってきたイスラはおそらく来ても2着止まり。フェノメノは堅実だが馬名が怪しい。ジェンティルの本番はジャパンカップらしいのでここはウォーミングアップかもしれない。理由はさだかではないが(たぶん騎手)エピファネイアは切っていた。

それじゃいったいどうすればいいんだってことで、マーティンボロとペルーサを大穴に突っ込みながらトーセンラーの弟、スピルバーグを軸に流して前日にPATちゃんと仲良くしておいた。

もう少しでラウンドが終わるという時に、秋天の時間が来た。

隣にいるこのろくでなしに誘われなきゃ、今頃家でごろごろしながらあったか~いお茶の間競馬THE秋天!だったのに。だいたい、外でスマホは何にも見えやしないじゃないか。

スタート直後に「ジェンティルに1000円」と、スイングの練習をしながらTは叫ぶ。

一緒に回っていたKが「オレはペルーサに1000円」と、よくわかりもしないぶんざいで、生あくびとともにTの発言に乗っていた。よくわからないとしたのは、Kは私とTの会話を横で聞いていて、なんとなく覚えていた馬の名を言ったにすぎないからだ。ペルーサっていうな。ペルーサなんだから。

この日初めて会ったTの同僚Iは競馬を知らないため完全黙秘を貫いていた。

あ、そう。よござんしたね。私は競馬が大好きだけど、ギャンブルは嫌いです。

この辺の深層心理学については、どこかに線引きをしてよいものならしてみたいということで頭をひねるところだけど、何か気の利いた文字が降りてきたらいつか書こうと思う。

スマホに聞き耳を立てそこなっているうちに、最後の直線になった。

「ほら」

「ほら!」

うるさいよ。

監督、頑張れ。

競馬中継はイスラボニータとジェンティルドンナ2頭の名前を盛んに連呼していて、スピルバーグのスの字も出てこない。こんな寒空に、来たくもなかった片道2時間のゴルフ場で「へたくそになったな」という心ない言葉に小突き回されながら歩き、最後は馬券まで散って、こやつらにバカにされるのかアタシは…。

『大外からスピルバーグ~~~!』キター!

いやー、どなたか知りませんが、実況の方。天使の声にきこえましたよ。ありがとうございます。

あまりの嬉しさに、新品のドライバーをへし折ってやりたかったが、「来たじゃん」というちょっとした尊敬を含んだTの声に気をよくし、でもおごらないよという意味で一瞥をくれてやった。

第150回天皇賞・秋は、ジャスタウェイやゴールドシップなどの実力馬の陰日向に甘んじていたスピルバーグが優勝。後でリプを見かえしたら、イスラもジェンティも強くていい競馬をしていて見ごたえがあった。兄のトーセンラーもそうだけど、プリンセスオリビアの仔は晩成タイプなのだろうか。私と同じ5月12日生まれのスピルバーグが愛おしい。最近とみに覚えられなくなった馬名だってスピルバーグならこの先も忘れないはずだ。

勝ちきれない馬が大舞台で勝つという競馬のよいところが満載の秋天だった。これから毎年一緒に、誕生日をお祝いしましょうね。

しかし、どうでもいいけどゴルフは面倒くさくて嫌だ。明後日あたりに遅ればせながら、まったく失礼な筋肉痛がどうせ襲ってくるのだろう。肉体的ダメージの少ないヤツにしてくれませんかね。麻雀を教えてよ。

「いいけど、その前に次のG1は何だっけ。エリザベス女王杯?いいねー。オレが馬券当てるに1000円」

まったく意味がわからない。こういう、何かを思い出したように競馬熱を復活させて、いきなり万馬券を当てちゃうタイプかもしれないと思うと、憎たらしくて気乗りしないが、勝負を挑まれたらやるしかない性格の私でもあった。Tにホッケが好きか聞いてみた。

「好きだけど、競馬と関係あるのか?」

大アリだよ!

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以上

上坂由香

出身地
北海道札幌市
職種
エッセイスト

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