自宅から競馬場に向かう途中にある北海道大学のキャンパス地下を突き抜けるエルムトンネルは、広めに作られた3車線と、入り口から緩やかな下りになっているため、知る人ぞ知る札幌市非公認の爆走ロード。うっかりするとすぐに100km出ちゃうなんてこともあるのに、体感速度はそうでもないという不思議なトンネルだ。
結構な長さのトンネル内を、おまわりさんを気にせず、気持ちよく走行できる快適空間から地上に出てほどなく進むと、札幌競馬場の第2コーナーあたりを取り囲むフェンスが見えてくる。
「なぜだ!今日は当たる気がする」
何度となく通ってきた道の上で、こんなことを思うのは初めてかもしれない。早くもにやにやしてきた。
競馬場に着いて、まずは引退馬協会さんの『癒しの馬・写真展』に立ち寄り、その後すぐに、待ち合わせをしていたリエさんと合流。「職業:競馬」とおでこに書いてありそうなリエさんのお仲間であるおじさま方にお目通りも許された。
席に座ってすぐにリエさんからおせんべいをもらう。テーブルの上はすでに、競馬新聞やらオッズ表などの紙関係でごった返していた。本日のタネ銭と思われる分厚い札束を二つ折りにしてポケットにねじ込んでいる元馬主の会長からカフェオレもいただいて、まずはリエさんとウマウマ談義スタート!「私はこれで競馬をはじめました」という、馴れ初めを話したり聞いたりするのは本当に楽しいし、競馬ファン誰しもが通る道だと思う。私はウオッカのダービーからだけど、皆さんたった1頭の馬からここまでやって来たという競馬史を持っている。自分の年齢から計算する前に馬の名前や名レースを出した方が年号をスムーズに思い出せる「競馬あるある」は最高だ。
景気づけに「あっというまに無くなっちゃったけどね」と、にっこり20万オーバーの万馬券写真をみせてくれた。
彼女の馬券術は「数字が好きなのよ」という言葉通り、何の感情も持ち合わせてないと思われる数字でも、引き寄せたり弾いたりする不思議な効力を見抜いて馬券にからめる手法。エア弟であるK氏と同じくコンピ指数も取り入れていた。私が得意とする血統やパドックは完全無視(笑)こんなところで異文化交流をしている気分になるなんて。そういや馬券番長もアビリティ指数ってやつを愛好していたな~。
メインレースをどうする?と、わーわー言いながらちょろちょろしてると、これまた弟分のソメちゃんに遭遇。相変わらず生活感のないかわいい顔をしていた。その直後に、私が競馬を始めてすぐに知り合った、騎手のおっかけ専門のイクちゃんにもばったり会っていきなりハグ。昨年の札幌記念ぶりの安否確認だった。なんか悔しいけど、イクちゃんはトシをとらないなー。いつ会ってもピカピカしている。何を食べているのだろう。若い騎手好きの恩恵はこれなのか。美人で年齢不詳のリエさんも若手の騎手を応援していた。大好きな典さんは私よりひとつ年上…若干後方でポツンとしてしまったが、ここは頑固なおうし座が出て、たとえ間違った道を進んで崖から転落しても「ずっとあなたが好きだった」と、叫びながら落ちたいのである。しつこいネ。
ベテランのおじさま方と一緒に観戦していて一番安心なのは、ここぞという時に出る「9番!いけ!そのままーーー!」と、心置きなく絶叫できるところ。私もそうとううるさいが、おじさま方は、どこからそんな声が出るんだというくらいの腹式発声でその上前をいく。ひとレース終わるたびに、勝っても負けても、タラレバ全開の超短編高速回顧タイムもすごい。すでに霊界に近づいていると思われるおじさま方の馬券は、神がかったように的中したりカスったりを繰り返していた。あさっての方向馬券はほとんどないので本当に心から尊敬したい。
皆さん、着々と全レースを賭けまくっている中、私は東西メインレースのみで勝負することに。
桜花賞トライアルの阪神フィリーズレビューでは、リエさんやおじさま方の指南を受けて、北陸新幹線開通記念にムーンエクスプレスから5頭(コートシャルマン、ペルフィカ、スマートプラネット、ダノングラシアス)流しの3連複。1番人気のクイーンズリングは、馬体重の大幅減が気になり外していたら…!来たし!ミルコー!あんた、そーやって今後日本を引っ掻き回すつもりでしょー!w
気を取り直して、中山牝馬S。バウンスシャッセから5頭(フレイムコード、マイネグレヴィル、アイスフォーリス、ブランネージュ、パワースポット)を流して3連複。このレースで引退となるアイスフォーリス渾身の末脚を目に焼き付けながら、ようやく的中!「やっぱり我々は中山牝馬あたりが親近感わくよね」と、リエさんと一緒に笑ったのは言うまでもない。そのリエさんは涼しい顔で3連単の万馬券を的中させていた。さすがだなー。
そんなこんなで全レースが終り「お疲れさまでした」とお仕事の労をねぎらって解散。
オケラ街道を間逃れた私は、また来た道をルンとした気分で走り、再びエルムトンネルをくぐって北に向かう国道に出た頃には、もうリエさんたち競馬場の重鎮方に会いたくなっていた。元馬主の会長からもらったかりんとうの袋を開けて、ぽりぽり食べながら法定速度で安全運転。
来週も行けるだろうか。行きたいな~。