2015年05月18日

馬からもらう恩恵。

「いやいやいや・・・。無理だわー。買えないわー」

昨日のヴィクトリアマイルを観戦して、私と同じつぶやきをした方も多いと思いますが、ここ数週間、波風立たず、水中の魚がみえるような穏やかなベタ凪競馬が続いていたところにこの大波乱!6歳のストレイトガールが『悲願』と書いた大きな石を湖面に投げ入れましたね。

その時できた波紋のでかいことといったらもー、3連単が2070万!「にせんななじゅうーまぁ~~ん、にせんななじゅうーまぁ~ん、さぁないか。お考え中か。はい、にせんななじゅうまん!カン!ありがとうございます!!2070万!」…セレクトセールで馬買えちゃいますよ。

私を含め、一般の人間にはいろんな意味で「無理」な2000万オーバーの配当をメイキングしたのは2着ケイアイエレガント(12番人気)と、華麗に逃げてハイペースハイリスクなレースをけん引した3着ミナレット(18番人気)でしょう。最後の直線は、そのまま逃げ残ってしまえと万歳しながら応援です。ゴール前でかわされてしまいましたが、みごとな競馬を演出してくれました。ブラボー!ミナレット!

優勝したストレイトガールはフジキセキ産駒で母父タイキシャトル。いかにもスプリンターな血統で1200mのプロ。東京を走るのは昨年に続き2回目という6歳にしてこのフレッシュさです。上位3頭のお嬢さんたちを順序よくお買い求めになった方がいるんでしょうねー。いいなー!

このレース「何かが起きる」とふんだ私は、久しぶりに武兄弟が揃って出走というところに注目して、ひょっとしてまたマンボが飛んでくるかもしれないと、ヌーヴォレコルト、メイショウマンボ、スマートレイヤーという買い目。まったくもって、明後日の方向でした。ヌーヴォさん、どうしたのかな~。イレ込んでいたのが裏目に出てしまったのかしら。そしてマンボさん。たとえて言うならゴールドシップの牝馬バージョン。本当はものすごく強いはずなんですよ。それなのにニヤニヤしてもう走らない。そう思わせておいて、もう一回くらいあるんじゃないかと、メイショウのオーナーの涙顔まで想像していたのですが…。トホホ。

何かが起きる胸騒ぎの原因は、G1史上最高額の配当だったようです。

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担当のヤブ医者(本当は名医)から「いい加減に切るよ!切らせてくれ!」と懇願されているオンボロの腰と首を持つ私ですが、もともとはそこそこのアスリートで、背筋力175kgを高校時代に記録したり、中学時代の砲丸投げの記録も歴代1位のまま。私の旧姓が書かれた紙が、今も母校の体育館に貼られているのが唯一の自慢となっております。

札幌市北区という狭ぁ~いくくりではありますが、こうみえて(実像は見えませんが)若い頃は足も速く、脚質も短距離から中長距離まで対応できるクリフジのような万能型牝馬でした。

このトシになって(47歳)同級生の運動経験者をざっくり見渡すと、野球部の主将だった男は頸椎ヘルニアの手術をしていたり、私のように腰痛などの身体の不具合がもれなく起きているという状態。一方、帰宅部といわれていた部活経験のないひとたちは、今でもほとんど故障がなくピンピンしていたりして。これはいったいどういうことなのでしょうか。関節は使えば使うほど摩耗しますし、走りまわっているうちに身体が酸化してサビてしまったのかもしれませんね。

前置きが長くなりましたが、そんなこんなで、馬乗りに行っても、ギシギシと音を立てて軋む自分の身体に不自由さを感じる今日この頃。

先日、札幌市中央区盤渓に『北海道障がい者乗馬センター』を訪ね、我が国では数名しかいない英国RDA(イギリスに本部を置く障がい者の慈善団体)インストラクター(このライセンスは世界基準です)で、同クラブの理事でもある要海博司氏のレッスンを見学してきました。

一般の方も乗馬ができる施設内に『乗馬セラピー倶楽部』という、身体の不自由な方を対象とした乗馬教室を行っています。

障がい者乗馬は、自立を助け、馬に乗ることで自信と誇りが回復し、適度な緊張を体験しながら達成感を持たせることで精神面をサポートすると同時に、神経系統や骨格の発達を促進して、身体的なバランス感覚を養うことを目的とした治療的・療法的な乗馬です。

「障がいの状態に合わせて騎乗する馬を選び、時には補助をするひとをつけてレッスンします。単なる曳き馬をやって(あー、楽しかったね)もいいですが、ここではしっかりとしたリハビリ・トレーニングとして障がい者乗馬を行っていますから、実は結構ハードですよ!」と、ドラゴンボールの亀仙人にそっくりな(スミマセン!)要海さんは笑います。

障がい者の方にハードな乗馬?

セラピーを含めたトレーニング形式の乗馬の効果は、適度な緊張感と緩和を繰り返し、身体全体に感じさせることで増幅するとのこと。障がい者も健常者も、馬上のひとになれば皆同じなんですね。

Dscf1665K君は四肢に重度のマヒがあり、とても乗馬をできるようなからだには見えませんでしたが、両手が使えないため手綱なしでも、しっかりとバランスよく軽速歩ができていて本当に驚きました。馬の両脇には補助のボランティアがおり、時々K君のふくらはぎと馬体の間に指を入れて、筋肉に力が込められていることを確認しながら慎重に誘導。馬の背中のやわらかな揺れが、K君の身体に伝わり、丸くなった上体も自然におきてゆきます。馬術の本場イギリスでの留学を経た要海さんは「Good!Okay!」と声をかけながらK君を励まし、補助のひとに細やかな指示をしながら全体の様子を見ていました。輪乗りの時は遠心力に負けじと、K君もしっかりと脚にちからをこめて扶助ができており、笑顔で両手をたたきながら「うまく乗れた喜び」を全身で表現していました。

Dscf1659R君はグループレッスンの最後尾に。3名の障がい者さんですが、先頭のお子さんは経験を積んでいてとても上手。要海さんの掛け声も力が入ります。馬の揺れ(反動)に、身体が悲鳴を上げそうになっても、懸命に前についてゆこうという意志を感じ取ることができました。常歩から速歩。リズミカルにテンポよく何度も周回。R君は乗馬をはじめたばかりだとお母さまから伺いましたが「馬からいただいたご縁でここまできました。いつの間にか私も馬好きになって、お手伝いのボロ拾いや馬の手入れが楽しいです」と、嬉しいエピソードも。R君もレッスンが終ると汗びっしょりで、頑張った後にやってくる気持ちのいい達成感を味わっているようでした。

2020年の東京オリンピックでは同時にパラリンピックも行われます。馬術競技も含まれていますので、高校生のK君は興味を持ってみてくれるのではないでしょうか。

静と動。乗馬いう動によって心身が穏やかに整えられ、やがて心地のいい静が生まれるのかもしれません。もちろん、馬とのふれあいだけでも、日頃うまく自己表現できずにストレスを溜めがちな障がい者さんにとっては、とてもすぐれたリラクゼーションになるそうです。馬からもらう恩恵は計り知れませんね。

ひとのこころと身体に寄りそう忍耐強いセラピーホースたちも、障がい者健常者を問わず、いつでもパートナーになるべくスタンバイしています。

私も障がい者さんたちと一緒に乗馬をしたくなりました。

「いつでもどうぞ!みんなで楽しく乗りましょう」

要海さんが取得された世界基準の障がい者乗馬のインストラクターの資格にも挑戦してみたいと思いました。イギリス留学は無理なので、こちらに弟子入りしちゃおうかしら。

http://www.horse-therapy.net/ ←お問い合わせはコチラです。

Dscf1662

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以上

上坂由香

出身地
北海道札幌市
職種
エッセイスト

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