時々、わけのわからないことに遭遇して、何だか困ったなァと思う時は、伊集院静氏の血みどろだった暗黒時代のことを綴ったエッセイを読んだりして「ぷぷ!まだ私の方が全然マシ!」と言いながら、自らを元気づけている。
これが結構な効果で、自分がいかに今しあわせなのか、いとも簡単に実感できるのがありがたい。
おかげさんで、そんなことをたびたび繰り返すうちに、その本はいい具合にボロボロになって、鋭利だった角がとれて丸くなり、しっとりと手に馴染むようになった。古本屋で買ったこの1冊。確か100円。奇しくも馬券と同じお値段に、日々救われてモトまでとっているという。お買い得が好きな世界のシフには本当にありがたい男の生き様です。
さて、菊花賞の出走権をかけた神戸新聞杯。私の応援馬、何事もなければ菊花賞に出るあろうキタサンブラックの行く手を脅かす馬は誰か。とても重要なことを見極めるための探りレースになった。
その時間私は近所の乗馬クラブにおり、社長とふたり、競馬観戦でもしようかと思っていたら、テレビの不調でワンセグ観戦。キャロットの勝負服も鮮やかに、リアファル(父ゼンノロブロイ)が2400mを逃げ切り勝ちにおさめた。
―――うーん、この場をこんな余裕こいて勝つなんて。長いところはやはりディープインパクト産駒じゃない気がするなぁ、ルメさんラクに乗ってたなー、いっくん(福永騎手)抜け出し遅いよ、何やってんのかなぁ…なんて、
ブツブツ即席回顧をしていたら、今月30日にJRA騎手試験を受ける藤井勘一郎騎手がクラブハウスにやってきた。
海外のレースで400勝をあげている藤井騎手に、神戸新聞杯の結果はこれこれこのようなことにと話すと「(勝ったのは)ルメールさんですか」と感慨深げ。爽やかな笑顔の中に虎視眈々とその座を狙う男気を感じた。騎手試験の中に、ブリティッシュで障害を飛んだりいろいろな実技があるので(そんなものは実際いらんやろう!)、藤井騎手も鐙の長い状態でせっせと練習に励んでいる。今年こそはぜひとも見事な合格を!
藤井騎手の練習風景を眩しすぎる秋のこもれびとともに拝見しながら、PATに有り金全部をぶち込んできた勝負レース産経賞オールカマー!中山の2200mが、府中の天皇賞・秋までつながっているという違和感たっぷりのこのレース。
「本番」前のレースというのは、馬ではなく、陣営の策略が盛り込まれている気がするし、ここで勝っとくか、勝たずして本番なのか、考えているうちにわけがわからなくなってきた。
で、素直に皐月賞馬のロゴタイプを軸に据えようかと思ったが、なぜかミトラの本番がこのレースかもしれないという気がして7番人気のミトラ軸!そこからロゴ、マリアライト、パンドラ、ヌーヴォ、ミラノを投入した5頭流すことに。来てもやっすいことウケアイ。
「キミね、負けなきゃいいんだよ」という伊集院さんの書いた1行を胸に秘めての勝負だった。
レースはマイネルミラノが引っ張る展開。メイショウ軍団がいて、ロゴ。ミトラも来た。パンドラは中団やや後ろでマリアはどこいった?そんな感じでぐんぐん加速していき、最後の直線、ヌーヴォの進路がないなーと思ったら、ミラノの内をこじ開けて運よく出れたところで、岩田さん、こりゃー後で叱られるなぁと思った。びっくりしたミラノは失速。ロゴとミトラが追い上げて、そこにパンドラがぶっ飛んで来るという!つよ~~~~~~~~。
勝ったのはショウナンパンドラ。440kgの馬体なのに、身が詰まって500kgくらいに大きく見えた。フレンチデピュティ爺ちゃんの重厚感にディープの鋭い軽さをミックスした素晴らしい末脚だった。2着はヌーヴォで牝馬のワンツー勝利とセン馬ミトラのオネエで決着。牡馬を蹴散らす結果は久しくなかったことらしい。
普段物静かなLINEがぴよぴよと鳴っている。競馬仲間たちは馬券をとりこめたのだろうか。
(神戸新聞杯はノーザンファームの1,2,3だったね)と書いてあった。
カマーもそれに準ずる生産牧場!上から5頭みんなそうやんか!と打ち込んでやろうかと思ったけれど、馬券に泣く時間が優先なので割愛した。晩ご飯は1個40円のコロッケだな…。
練習馬場をみると、藤井騎手はまだ馬上のひとだった。義父であるコーチの声に馬を巧みに操っている。
「きっとこのひとが、競馬界を変えるんだろうな」
それが現実のものになるように、わざわざ声に出して言ってみた。
言霊のチカラを私は信じている。