2015年07月20日

誰も書いてない(よね?)セレクトセール当歳の巻。

先週、「行ってきます!」と告知したセレクトセール2日目当歳の朝。

前日の湿っぽかった月曜日の1歳セレクトから一転、うららかに晴れわたる火曜日のノーザンホースパークは、年に1度。正確にいうと2日間、北海道の小さな町(安平町)に、競馬界の『中央』がやって来る重要な日だ。

騎手や調教師はもちろん、競馬関係者が一挙に押し寄せ、落札の動向を見守りながらそれぞれが親交を深める社交場となっている。

セリの主役である仔馬たちはもちろん、みたこともない、100kg超級の分厚い財布を持っているであろう馬主さんをはじめ、諸外国を含む多くの関係各位がご自分たちのポジション取りをしていた。

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私はいつものように、セリの行われるステージの真裏にある日陰に身を寄せた。

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一般的にライブ中継される舞台の背中合わせにも、小ぶりな馬見せ場があり、そこには高額の馬を(結果的に)買い求めることが多いTオーナーご一行様が陣取ってお座りになっていることを知っていたので、チラ見も当然兼ねている。

派手さはないが、何となくこちらのブースの方が気持ちが落ち着く。母の乳をねだる仔馬の様子や、無理に引き離されず、寄り添う姿を間近で見ることができる。扉の向こう側に、我が仔の未来が待っているのを知っている母馬は、きりりとした瞳をしていた。

でかいずうたいを折りたたみ、なるべく目立たぬようにしてたはずなのだが、通路を行き交う顔見知りの関係者にたやすく発見され、談笑をしながらその時を待った。

14日火曜日は今年生まれの当歳(とうざい)に、いよいよオルフェーヴル産駒が登場するとあって、無駄なハナ息を抑えられない。

しかもこの日のトップバッター301番カリフォルニアネクターの2015の父はそのオルフェとあって、会場はすでに浮き足立っていたように思う。セリ開始の10時から固唾をのむことになった。

カリフォルニアネクターの祖父は、日本の競馬界にとって最も魅力的なストームキャットということもあり、まずまずの値がつくと予想していた私は、6500万あたりまでニヤニヤと気をよくしているうちに、あっという間に8000万まで値が到達。

すぐ横にいた記者さん等と顔を見合わせ、薄くてたよりない眉毛だけをぐいぐい持ち上げる仕草で喜びの万歳をしていた。

落札したのはダノックスの野田オーナー。オルフェによく似た栗毛のめんこちゃんは、やがてそのまだ小さな頭に、立派な『ダノン』の冠名がつくことが約束された。セカンドネーム(?)どんな名前になるだろうか。かっこいいのをお願いしまーす。

今年はオルフェの他にも初年度産駒を登場させているロードカナロア、エイシンフラッシュなどにも注目が集まっていたが、私の情熱は大好きだった「父オルフェーヴル」に釘づけのまま、緊張と緩和を繰り返した。

「この仔はきっとすごいに違いない!」と思わせるみごとな仔馬はリュシオルの2015。

どこからどうみても、ミニオルフェ。明るい栗毛といい、金色の艶やかな尾といい、もののみごとにそっくりだった。

母父クロフネも間違いのない信頼の血筋だが、母系にスリープレスナイトやヒシアマゾンの馬名を見つけた時から激しくシビレていて注目していた。

思った通りになかなかの競り合いになり、母のリュシオルは「何をぐずぐずしているの。もっとあげなさいよ、ほら!」と言いたげに前かきをはじめて馬主の心理をあおっている。

結局、8600万で『アドマイヤ』の近藤オーナーでビット。ダノン同様、この仔も頭にアドマイヤの大きな冠が約束された。

産駒が無事に競り落とされると、そのまますぐに写真撮影の場所まで移動。オーナーによっては、仔馬との記念撮影の後、囲み取材を受けたり、早いところでは、調教師さん等が駆け寄って、聞こえそうで本当は聞いちゃいけないような取り交わしをして準備万端。

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「本番」が終ってホッとしながら厩舎に戻ってゆく親子のお尻を、いつまでも愛おしそうに眺めているオーナーさんの晴れやかな笑顔を見ていると、この先いったいどうなるのかわからない仔馬に大バクチを打って、すでにダービーを勝利したかのようにご満悦だ。会場の雰囲気をより一層華やかなものにしてくれているのは、高額云々ではなく、ここに集まれるみんなの笑顔なのだろうと思った。

セレクトセールは馬主さんたちにとって『一番長い日』であり、『一番かっこいい日』なんですね。

馬主さんといえば、こんな粋なお買い物をする方もおられる。

世界のジャスタウェイ大和屋オーナーは、かわいい息子のために、お嫁さん候補としてカールファターレの2015を落札した。

父は北米6勝をあげたヘニーヒューズ。しっかりとストームキャットが入っており、母系には偉大なご聖母ダイナカールときたら、文句のつけようがないお嫁さんになるだろう。

ジャスタウェイのために、セリ前から厩舎訪問をして仔馬を見定めていたオーナーの楽しそうな顔が今も忘れられないでいる。よかったねジャスタ。

1億越えはディープインパクトの子どもたちが多く、大々的に報道されたのでさらりとだけ触れておくが、価格のトップはウィーミスフランキーの2015の牝馬で1億8000万。ダノックスが落札。2番手にキングカメハメハの牡馬ギーニョの2015は1億5500万でトーセンの島川氏、3番手はディープの仔でベルワトリングの2015の牡馬と、ハービンジャーの仔ケアレスウィスパーの2015がいずれもトーセンさんに1億2500万で落札された。

この辺の成り行きに関しては、ただただ無表情で見守るだけしかない私だったが、億の呼び声も、ディープインパクトの仔については、彼の種付け料からすると、その10倍くらいで落ち着くならば、ある意味適正価格といってもいいのかなと、頭の中では変な解釈をしていた。太宰治のように「生まれた時が一番出世していた」と言われないように、ディープっ子には強くなってほしいと思います。

一方、主取りといって、値段がつかなかった、手があがらなかった仔馬もいる。

密かに注目していたアサヒライジングの2015。父はシンボリクリスエス。彼女の仔は主取りになってしまった。

私は慌てて、すぐ隣にいた競馬有識者に「いったいあの仔はどうなるのか」と訊ね、いい方の答えを言ってほしい眼で喰い付くと「主取りになっても、厩舎の前で生産者と交渉したりすることもあるから、そんなに心配しなくていいよ」とのこと。私はその言葉を信じることにした。

その先の確認はできなかったが、札幌クイーンSを優勝して私に恩恵をもたらせた、あの美しいアサヒライジングの仔だ。他の機会にきっと買い手がついてくれるだろう。

この日の売り上げは60億6900万円になり、2日間の合計の売り上げは131億7350万円。昨年の125億7505万円上回る、史上最高額となった。

このあまりにも現実からかけ離れた数字に「それがどうした」と言いたくなるのをぐっとこらえ、「この仔はきっと凱旋門賞にいく!」などと、大げさな予想を繰り広げつつ、スペシャルすぎる余韻に浸りながら帰路についた。

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